よくわからない?消費税の簡単な説明に挑戦 その1

消費税のしくみ

消費税及び地方消費税(以下、消費税といいます。)のしくみについて、簡単な説明を試みます。

消費税を税務署に納める個人事業主、会社の方向けの説明です。

 

よく、消費税を負担するのは最終消費者といいますが、消費税を税務署に申告して納めるのは課税事業者です。

 

私たち税理士も小学校で「租税教室」の講師をするときには「小学生の皆さんも税金を払っています。消費税です」などと話をしますが、今回は忘れてください。

 

消費税の申告をするのも、税務署に納めるのも、一度に納められなくて延滞税を払うのも、みんな課税事業者です。

 

消費税は課税売上(消費税がかかる売上)について、その10%(軽減税率なら8%)をお客様から受け取って、課税事業者(消費税を申告・納税しなければならない事業者)が納税します。

 

ただし、その課税事業者も仕入れや経費の支払いで他の事業者に支払った消費税があるわけで、その合計額をお客様から受け取った消費税の合計額から差し引いて税務署に納めます。

 

この受け取った消費税から支払った消費税を差し引くことを、仕入税額控除といいます。これ重要です。

 

つまり、受け取った消費税はまずその一部が仕入先へ行き、残りを税務署に納めることになります。課税事業者の手元に消費税は残りません。

 

これが消費税の基本のしくみです。

 

課税事業者が受け取った消費税は全額仕入先または税務署に支払われますので、課税事業者の損益計算には何も影響がありません。このため「消費税は預り金である」ともいわれるのです。

 

なお、消費税の申告は、一年間の課税取引を全部合計して計算しますので、一つ一つの売上、仕入の前後関係などは気にしません。

 

 図のとおり、消費税のしくみは単純明快なはずですが、なぜ、わかりにくいのでしょうか。

 

 その理由は次の4つであると思います。

 

1 すべての取引に消費税がかかるわけではない。

 

2 すべての事業者が消費税を納めるわけではない。

 

3 仕入税額控除が結構大変。

 

4 原則に対して、特例がたくさんある。

 

すべての取引に消費税がかかるわけではない

 消費税がかかる取引は、次の1から4のすべてに該当するものです。

 

1 日本国内において行われる

 

2 事業者が事業として行う

 

3 対価性がある

 

4 非課税取引ではない

 

国内取引

 日本の消費税は日本国内で行われる取引に限って課税されます。航空運賃などは出発地か到着地のいずれかが外国であれば消費税がかかりません。

 

 輸出入取引については消費税法上、国内取引として扱われます。但し、輸出取引については、輸出許可書の保管などを条件として消費税が免税となります。

 

事業として

 消費税は事業者が事業として行う取引にのみ課税されます。なお、ここで事業者が事業として行うものかは、お金をもらう側(売主)について判断します。

 

 会社が行う取引はすべて事業者が事業として行うと判断されます。

 

 個人事業主の場合は、反復、継続、独立して行われる取引は、事業として行うと判断されます。

 

したがって、税理士の私がたまたま古着を売っても、消費税はかかりません。これは反復、継続していないからです。一方、事務所で使っていたパソコンを売れば、消費税がかかります。ここはわかりにくいところです。

 

 また、サラリーマンは会社などに所属していて、独立して仕事をしているわけではないので、給料には消費税がかかりません。

 

対価性がある

 対価性がある取引には消費税がかかるとされますが、対価性があるとは何でしょうか。

 

 対価性があるということは、物やサービスの提供とお金の支払いとの間に直接の引き換え関係があるということです。

 

 「代金」といいますからね。

 

 対価性がないということは、この直接の引き換え関係がないということです。

 

 たとえば団体の会費は、会費と会員として受ける個々のサービスとの間に直接の引き換え関係がないので、会費には対価性がなく、消費税がかかりません。

 

 持続化給付金などの補助金や店舗や工場が火災になったときの保険金なども対価性があるとはいえません。

 

 また、無料の取引には対価がありませんが、個人事業者の八百屋さんが売り物の野菜を家族で食べるといった家事消費などには消費税がかかります。対価はなくても対価性はあるということでしょうか。

 

 このあたりもわかりにくいです。

 

 

非課税取引

 国内取引、事業として行われる、対価性がある、のすべてにあてはまる売買やサービスの提供であっても、消費税をかけることになじまないとされる取引については、消費税非課税と定められています。

 

 土地の売買や賃貸借、住宅の賃貸借、利子や保険料の支払い、一定の行政サービス(たとえば住民票の発行手数料)、社会保険診療、教科書販売などがこの非課税取引です。

 

 

福祉車両のすすめ

 少し話がそれますが、足の不自由な人が楽に乗り降りできるように座席が機械的に車外に降りてくるなどの機能がある福祉車両の売買も消費税非課税です。

 

こうしたオプションにはお金がかかりますが、自動車全体として消費税が非課税であれば、差引きして大きな負担とはなりません。

 

消費税が10%となった今、高齢者がいるご家庭などでは非課税の福祉車両の購入を検討されてはいかがでしょうか。

 

ダイハツ工業の福祉車両

 https://www.daihatsu.co.jp/friendship/index.htm

 

 

すべての事業者が消費税を納めるわけではない

 消費税がわかりにくい理由の二つ目は、消費税を申告・納税しなくてもよい、免税事業者という制度です。

 

消費税は、基準期間(その課税期間の前の前の課税期間)の課税売上高(消費税のかかる売上高)が1,000万円以上あるとその課税期間の消費税を申告・納税しなければなりません。

 

なお、消費税の課税期間は会社の場合は各事業年度、個人事業者の場合は11日から1231日までの1年間です。

 

免税事業者には二つのパターンがあります。

 

1 開業してから2課税期間

 

  事業を始めてから2課税期間は前の前の課税期間というものがありませんので、基準期間がありません。

  基準期間の課税売上高というものがないので、申告・納税義務もないという理屈になります。

 

  個人事業主が会社を設立、新しく作られた会社が個人の事業を引き継ぐ「法人成り」の場合も個人事業主と会社(法人)は別人格ですから新会社は免税となります。これは法人成りの絶対確実なメリットの一つです。

  但し、下記の特例に注意しなければなりません。

 

一方、個人が相続により事業を引き継いだ場合も相続人は被相続人とは別人格ですが、特例で、相続人は被相続人の納税義務を引き継いで最初から課税事業者(消費税を申告・納税すべき事業者)になります。

 

したがって、たとえば親子で事業を引き継ぐ場合には、親御さんがご存命のうちに代替わりをしたほうが良いです。ご存命のうちであれば代替わりした年とその翌年、消費税は免税になります。

 

なお、基準期間がない個人や会社でも、その課税期間開始後6か月間の課税売上高および給与支払額の両方がそれぞれ1,000万円以上となった場合には翌課税期間から納税義務が発生するという特例があります。

 

また、各事業年度開始の日において資本金が1,000万円以上である会社は、基準期間がなくても、その事業年度から消費税の納税義務が発生します。これも注意するべき特例です。

 

2 基準期間の課税売上高が少なかった場合

 

  事業を始めてから何年たっても、課税売上高が1,000万円未満である課税期間の翌々課税期間は消費税の納税義務がありません。

 

  基準期間の課税売上高が1,000万円未満であるかぎり、その課税期間の課税売上高がたとえ何億円でも消費税を納める必要はありません。

 

前々課税期間の課税売上高が1,000万円あるか否かで、課税事業者と免税事業者を毎年行ったり来たりということもあり得ます。

 

  この場合注意しなければならないのは、免税事業者である基準期間においては消費税込み1,000万円で判断するのに対して、課税事業者である基準期間では消費税抜き1,000万円で判断することです。

 

仕入税額控除が大変

  つづく

  途中ですが、今日はここまで。

  お読みいただいて感謝します。

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おことわり

税法・税務に関する記載内容、ブログについては税理士として細心の注意を払っています。

しかし、読みやすさに配慮する結果、細かい例外や特例規定などに記載が及ばないことがあります。

このウェブサイトに記載された事項に基づいて取引、申告等される場合には、この点をご理解のうえ、必要に応じて関与税理士、所轄税務署等にご相談されることをおすすめします。