そんな人がいるのかという話ですが、いるのです。
相談を受けました。
天下りではありません。
退職金に対する所得(退職所得)は、退職金の額から、次の計算による退職所得控除額をさし引いた金額を2分の1した金額です(通常の退職の場合)。
勤続年数が20年以下の場合
勤続年数×40万円(最低80万円)
勤続年数が20年超の場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
退職所得控除額は、1年につき40万円、21年目からは1年につき70万円ずつ積み上がっていく計算です。
去年(規定上は前年以前4年内に)退職金をもらって、今年また別の会社から退職金をもらうということは、二つの会社に同時に勤めていた期間があるということでしょう。
このように、今年の退職金の勤続期間と前年以前4年内の前回の退職金の勤続期間が重なっている場合の、今年の退職所得控除額の計算方法は、所得税法施行令70条に規定されています。
同条によれば、このような場合には、通常の場合の計算による退職所得控除額から、その重なっている期間の年数を勤続年数として仮に計算をした退職所得控除額を差し引いた金額を、今年の退職所得控除額とすることになっています。
重なっている期間に積み上げた退職所得控除額は、前回の退職金で使ってしまったから使えないというわけです。うまくできています。
その代わり、前回の退職金が、勤続年数から計算した退職所得控除額より少ない、つまり積み上げてきた退職所得控除額を全部使い切っていない場合には、前回の退職金の勤続期間は、就職の日から次の算式による年数の期間であるということにして、今回の退職金の勤続期間と重なる期間を計算することになっています。
前回の退職金が800万円以下の場合
前の退職金÷40万円
前回の退職金が800万円超の場合
(前の退職金-800万円)÷70万円+20年
ますますよく考えられている、といいたいところですが、ちょっと変な気がします。
以下の仮定で計算してみましょう。
A社の勤続年数・・平成元年から平成25年までの25年間
B社の勤続年数・・平成元年から平成26年までの26年間
A社の退職金・・・600万円
B社の退職金・・・800万円
するとこのようになります。
A社の計算上の勤続期間・・600万円÷40万円=15なので、平成元年から平成15年
計算上、重なる期間・・平成元年から平成15年まで15年間
重なる期間の退職所得控除額・・40×15=600万円
B社の通常の退職所得控除額・・800万円+70万円×(26-20)=1,220万円
B社の退職所得控除額・・1,220万円-600万円=620万円
A社の退職金に対する退職所得控除額は、退職金の額と同額の600万円です。
マイナスの退職所得ということは考えません。
そうだとしたら、前回、退職所得控除額を使い切っていない場合の今回の退職所得控除額の計算は、おかしな割り戻しの計算をするよりも、単純に「今回の勤続年数から計算した退職所得控除額から、前回の退職金の額を控除した額とする」と規定したほうがわかりやすくて良いのではないでしょうか。
割り戻し計算による金額と、退職所得控除額に満たない前回の退職金の額は、年数の端数処理によって一致しない場合もありますが、これによる課税上の弊害はないと思います。
少しでもわかりやすいほうが良いのです。